精神分析とは、オーストリアの神経科医フロイトによって創始された心理療法の一つであり、事実上心理療法の起源とも言われています。精神分析は、患者(と呼ばれます、または被分析者とも)がリラックスした状態で、こころに浮かぶことを批判することなくそのまま口にしていくこと(自由連想)で進んでいく治療法です。フロイトはこれにより抑圧された欲望や願望が意識に持ってこられ、患者が悩んでいる身体的・精神的症状が軽減または消失すると考えました。
その後の精神分析はイギリス、アメリカ、フランスなどでさまざまな発達を遂げ、主立ったものでもフロイトによる古典派のほか対象関係論、自我心理学、対人関係論、自己心理学、関係性精神分析などがありますが、特に「これ」といった特化した専門の流派でトレーニングを受けたのでない限り、多くの臨床家はいくつかの理論や流派を併用しているのではないでしょうか。根底では最初に書いたような、過去の体験と現在の症状や人間関係との関連など、その他の見方を共有しているためにすべて「精神分析的」と呼ばれているのです。
いわゆる本格的な「精神分析」はカウチ(寝椅子)の上に患者が横たわったセッションを週3~5回くらい行うというかなり密なものです。しかしフロイトの時代は現代に比べ治療期間は数ヶ月程度と短かったという指摘もあります。こうした時間とそれに付随するコストが精神分析への主立った批判の一つとなっていますが、それもあって現代ではむしろ週1~2回のセッションを行う「精神分析的心理療法(精神療法とも)」の方が主流となっています。
根治的治療のためには精神分析の方が有効とする議論もありますが、精神分析的心理療法でも十分に症状の軽減、人間関係や生活の質の改善などの効果は得られると思われます。
なお、「精神分析家(精神分析医)」を名乗るためには専門的な精神分析インスティテュートで数年に渡る訓練分析と担当するケースのスーパービジョンを完了することが要求されます。