複雑性PTSDとは、PTSD(トラウマ後ストレス障害)の原因となるトラウマが複数あり、それが絡み合って複雑な心的状況を作り出しているものを言う。
一つの出来事(トラウマ的出来事)だけでもPTSDになり得るが、その場合その出来事について気持ちなどを整理していくことで比較的解消しやすい。実際には、トラウマを一つだけ(たとえば地震など自然災害の被害や犯罪被害など)抱えているという状況はおそらく稀であり、カウンセリングや心理療法の場に現れるクライアントは複数のトラウマを抱え、PTSDであれば複雑性PTSDであることも多いと感じる。
たとえば、子ども時代に虐待があった場合、それが「たった1回」の出来事である確率はかなり低い。身体的虐待、性的虐待、ネグレクトなどは繰り返されがちなものである。加害者も一人でないことも多い。虐待のベースとして、ちぐはぐな親子関係(愛着関係上の問題)がある場合も多い。
人間の発達というのは前の段階の上に次の段階が積み重なっていくものなので(たとえば、まず赤ちゃんの時期がありその後幼児期が来るなど)、幼ければ幼いほど記憶には上りにくいため、記憶として扱いやすいものから扱っていくことになる。また、幼児の体験など関係性のトラウマに当たるものは、治療者(カウンセラー)との関係の中で再現されるという形で発見されることが多い。
複雑性PTSDの解消や軽減には時間がかかるが、文字通り「すべて」のトラウマを解かなければならないものではなく、不快な症状を引き起こしている「何か」に当たれば、そこから改善していくことも考えられる。いずれにせよ重層的であるため、通常はあまり短い期間で扱えるものではないと言えるだろう。